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東京地方裁判所 昭和50年(ワ)8327号 判決 1975年12月18日

原告 有限会社水島商事

右代表者代表取締役 水島一男

右訴訟代理人弁護士 吉永光夫

同 森誠一

被告 有限会社蒲田製作所

右代表者代表取締役 斎藤紀一

<ほか二名>

主文

1  被告斎藤紀一、同郡司光は各自、原告に対し、金三二三、四〇〇円及びこれに対する昭和五〇年七月一日から完済に至るまで日歩九銭の割合による金員を支払え。

2  被告有限会社蒲田製作所は、原告に対し、金二三一、〇〇〇円及び内金四六、二〇〇円に対する昭和五〇年六月三〇日から、内金四六、二〇〇円に対する同年七月三〇日から、内金九二、四〇〇円に対する同年一〇月一六日から各完済に至るまで年六分の割合による金員並びに原告において別紙手形目録(6)の手形を同年一一月三〇日以後に支払のため呈示したときはさらに金四六、二〇〇円及びこれに対する右呈示の日の翌日から完済に至るまで年六分の割合による金員、同目録(7)の手形を同年一二月三〇日以後に支払のため呈示したときはさらに金四六、二〇〇円及びこれに対する右呈示の日の翌日から完済に至るまで年六分の割合による金員をそれぞれ支払え。

3  原告の被告有限会社蒲田製作所に対するその余の請求を棄却する。

4  訴訟費用は被告らの負担とする。

5  この判決は、第一、二項に限り仮に執行することができる。

事実

一  原告の申立

1  主文第一項同旨

2  被告有限会社蒲田製作所は、原告に対し、金三二三、四〇〇円及び内金四六、二〇〇円に対する昭和五〇年六月三〇日から、内金四六、二〇〇円に対する同年七月三〇日から、内金九二、四〇〇円に対する同年一〇月一六日から、内金四六、二〇〇円に対する同年一〇月三一日から、内金四六、二〇〇円に対する同年一二月一日から、内金四六、二〇〇円に対する同年一二月三一日からそれぞれ完済に至るまで年六分の割合による金員を支払え。

3  主文第三項同旨

4  1、2につき仮執行の宣言

二  請求の原因

1  原告は、昭和四九年一〇月二〇日、被告斎藤に対し、外国製中古乗用自動車マーキュリー・クーガー一九六九年型一台(登録番号品川三三セ二八四八)一台を代金月賦払いの約定により売り渡し、代金等の支払方法について次のとおり約した。

(一)  売買代金 一、二二〇、〇〇〇円

自動車税、取得税、登録代行費等諸費用立替金九〇、〇〇〇円

右月賦金総額一、三一〇、〇〇〇円

(二)  月賦金中、頭金七〇〇、〇〇〇円を昭和四九年一一月三〇日支払い、残金六一〇、〇〇〇円はこれを一五回に分割して以後毎月末日に支払う。

(三)  買主において右月賦金の支払を遅滞したときは、売主は催告を要しないで月賦払の約定を解除することができ、右解除の意思表示があったときは、買主は右遅滞の日から日歩九銭の割合による遅延損害金を支払う。

2  被告郡司は、右同日、原告に対し、被告斎藤の負担する右売買契約上の債務を連帯して保証した。

3  被告会社は、被告斎藤の前記月賦金債務の支払のため、原告に対し、各金額四六、二〇〇円の約束手形一五通を振り出した。原告は、そのうち八通(昭和五〇年五月三〇日満期の分まで)については支払を受けたが、第九通分である別紙手形目録(1)の手形、第一〇通分である同目録(2)の手形については、これをそれぞれ満期日に支払場所に呈示したところ、前者については資金不足、後者については取引停止処分後であることを理由としてその支払を拒絶された。原告は右各手形のほか、同目録(3)ないし(7)の各手形を現に所持しているが、右の事情のもとでは将来満期の到来する(3)ないし(7)の各手形についても満期日にその支払を受けえられる可能性がない。

4  被告斎藤もまた右手形金七通分に相当する残代金三二三、四〇〇円の支払をしないので、原告は、本訴状の送達により同被告に対する月賦払いの特約を解除する旨の意思表示をした。

5  よって、原告は、被告斎藤に対しては売買残代金債務の履行として、同郡司に対してはその連帯保証債務の履行として、各自金三二三、四〇〇円及びこれに対する月賦金支払遅滞の日((1)の手形の満期日)の翌日である昭和五〇年七月一日から完済に至るまで約定の日歩九銭の割合による遅延損害金の支払を、被告会社に対しては、同目録(1)ないし(7)の約束手形金合計三二三、四〇〇円及び満期に呈示をした(1)、(2)の手形については各満期の日から手形法所定の年六分の割合による利息の支払を、(3)、(4)の手形については本訴状送達の翌日(昭和五〇年一〇月一六日)から、満期未到来の(5)ないし(7)の手形については到来すべき満期の翌日からそれぞれ完済に至るまで、各手形金額に対する商事法定利率年六分の割合による遅延損害金の支払を求める。

三  被告らは、いずれも適式の呼出を受けながら本件口頭弁論期日に出頭せず、答弁書その他の準備書面をも提出しない。

理由

一  民事訴訟法一四〇条三項により、被告らはいずれも原告の主張する請求原因事実を明らかに争わないものと認め、これを自白したものとみなすべきである。

二  被告斎藤、同郡司に対する請求について

右事実によれば、右被告らに対する請求はいずれも理由があるからこれを認容すべきである。

三  被告会社に対する請求について

1  右請求中、別紙手形目録(1)ないし(4)の各手形金に関する分は、適法な呈示があったもの((1)、(2))及び本訴状の送達時(原告主張の日であることは記録上明らかである。)にすでに満期が到来していたもの((3)、(4))であり、即時支払を求める請求として理由があることは明らかであるから、これを認容すべきである。

2  同目録(5)の手形は、本訴状の送達後本件口頭弁論終結の日前に満期が到来したものであるが、手形金請求訴訟における訴状の送達には当該手形を手形債務者に呈示し遅滞に付する効果が認められており、かような効果は訴訟の係属中も持続するものと解するのが相当であるから、訴訟の係属中に満期が到来したときは、満期日に手形が被告たる手形債務者に呈示されたものとして、これにより付遅滞の効力を生ずるものと解すべきである。してみれば、右(5)の手形についての手形金及びその遅延損害金請求もまた理由があり、これを認容すべきである。

3  同目録(6)及び(7)の各手形はいずれも本件口頭弁論の終結時までに満期が到来しなかったものであり、いわゆる将来の給付を求めるものであるが、前記事実関係のように、被告会社は二通の手形について支払を拒絶し、またその余の三通についてもいまだ支払がなされていず、さらに、取引停止処分を受けたことが支払拒絶の理由となっているという事情のもとでは、原告は、右各手形について予めその請求をなすべき必要がある場合にあたるものと解すべきである。

しかるところ、原告は、本訴において右手形についても単純に各手形金の即時支払とこれに対する満期の翌日からの遅延損害金の支払を求めるが、いまだ満期が到来していないから、即時給付を求めることは許されないばかりでなく、手形の呈示証券たる性質に照らせば、訴訟係属中になお満期が到来しなかった手形については、事前に訴状の送達があったというだけでは満期日以降における支払のための呈示がなされたというに足りず、その後における呈示を必要とすると解すべきであるから、原告は、満期到来の日以降、手形を支払のため呈示してのみ手形債務者である被告会社に対し手形上の権利を行使することができ、またそれによってのみ付遅滞の効果を生じさせることができると解するのが相当である。

してみれば、右各手形金に関する原告の請求は、手形の呈示を条件とする限度では理由があるが、即時、無条件の支払を求める部分は失当であるからこれを棄却すべきである。

四  以上の次第であるから、訴訟費用の負担につき民事訴訟法第八九条、九三条を、仮執行の宣言につき同法一九六条を各適用して、主文のとおり判決する。

(裁判官 吉井直昭)

<以下省略>

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